私たちの社会で、まだまだ根深い問題として存在しているDV(ドメスティック・バイオレンス)。最近話題となっているDJまる氏の事件では、加害者本人の行為だけでなく、その母親による発言が新たな波紋を呼んでいます。被害者である戦慄かなのさんに対して「息子の人生をめちゃめちゃにした」と責める言葉を投げかけ、社会的な批判を浴びることとなりました。
なぜ、被害者を責めるような発言が起きてしまったのか。事件の経緯と共に、その背景にある問題を詳しく見ていきましょう。
1. 事件の経緯 ― DVから逮捕、母親の発言
2024年9月27日、アイドルグループ・femme fataleの元メンバーとして知られる戦慄かなのさんが、交際相手であったDJまる氏からのDV被害をSNSで告発しました。これは、私たちの社会に大きな衝撃を与えた出来事でした。
その後の展開は急速でした。9月30日、DJまる氏は暴行の疑いで逮捕されます。しかし、戦慄さんが被害届を取り下げたことにより、その後釈放されることとなりました。
ここで注目すべきは、10月3日に起きた出来事です。戦慄さんは、インスタライブ配信中にオーバードーズ(薬の大量摂取)を行い、救急搬送されるという事態に至りました。この配信では、DJまる氏との関係修復を示唆する発言もあり、多くの視聴者が心配の声を上げていました。
その後、幸いにも命に別状はなく保護されたと伝えられた戦慄さん。そして10月22日、再びインスタライブを行い、DJまる氏との破局を報告。この配信の中で、DJまる氏の母親とのやり取りが明かされ、新たな議論を呼ぶこととなったのです。
2. 母親の問題発言の詳細
戦慄さんが明かした電話でのやり取りは、多くの人々に衝撃を与えました。DJまる氏の母親は、被害を訴えた戦慄さんに対して「息子の人生をめちゃめちゃにした」と非難の言葉を投げかけたのです。
戦慄さんは配信の中で「許せない。はらわたが煮えくり返る思い」と心情を吐露。「私のこと悪く思っててもいいんですけど、建前としてまずは”うちの息子がすみません”じゃないですか普通は」と、母親の対応への憤りを表明しました。
この発言に対し、SNS上では「まともな育ち方したら、女の子に暴力振るうわけないもんな」「この年でママに庇ってもらうのか」といった批判が殺到。加害者の親という立場にありながら、被害者を責める発言をしたことへの怒りの声が相次いでいます。
3. DV加害者の親が陥りやすい心理
このような加害者の親による被害者非難は、実は珍しいことではありません。DV問題に詳しい臨床心理士の山田真紀子氏(仮名)は、次のように分析します。
「加害者の親、特に母親の場合、わが子の行為を認めたくない気持ちが強く働きます。自分の子育ての否定にも繋がりかねないため、現実を直視することが難しくなってしまうのです。その結果、被害者を非難することで、問題の本質から目を逸らそうとする心理が働くことがあります」
実際、内閣府の調査によれば、DV加害者の家族による二次加害の報告は年々増加傾向にあります。2023年度の相談件数のうち、約15%が加害者の家族からの心理的暴力を訴えているというデータもあります。
4. 被害者を二次加害から守るために
DV被害者支援団体「はあとぽーと」(仮名)の田中美咲代表は、次のように指摘します。
「被害者は、加害者からの暴力だけでなく、その家族からの心理的な暴力にも苦しめられることが少なくありません。特に、加害者の親からの非難は、被害者の心を深く傷つけ、回復を遅らせる要因となります」
そのため、支援団体では被害者のケアと同時に、加害者の家族に対する啓発活動も重要な取り組みの一つとして位置づけています。具体的には、以下のような活動を行っています。
- DV問題に関する正しい知識の提供
- 加害者の家族向けカウンセリングの実施
- 地域社会と連携した啓発活動の展開
5. まとめ:私たちにできること
今回のDJまる氏の母親の発言は、私たちの社会にDVに関する理解がまだまだ不足していることを示す出来事といえます。
DV問題の解決には、加害者の更生支援はもちろんのこと、その家族に対する適切なサポートと教育も必要です。そして何より、被害者を守り、支える社会の仕組みづくりが重要です。
一人一人が、DVの本質を理解し、被害者の立場に立って考える。そして、必要な時には適切な支援につなげる。そんな意識と行動が、今、私たちに求められているのではないでしょうか。
FAQ(よくある質問)
- DVにおける加害者の親の対応はどうあるべき?
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加害者の親は、まず自分の子どもの行為を直視する必要があります。被害者への謝罪と共に、加害者の更生に向けた適切なサポートを行うことが求められます。必要に応じて、専門家のカウンセリングを受けることも推奨されています。
- 被害者が受ける二次加害とは?
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二次加害とは、DV被害者が周囲から受ける精神的な傷つけのことを指します。「あなたにも原因があるのでは」といった被害者非難や、「夫婦の問題だから」と介入を避けるなどの行為が該当します。これらは被害者の心の傷を深め、回復を妨げる要因となります。
- DV被害に遭った時の適切な対処法は?
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まずは自分の身の安全を確保することが最優先です。警察や配偶者暴力相談支援センター(1つの機能として女性相談所があります)、DV相談プラス(0120-279-889)などに相談することをお勧めします。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けることが重要です。
- なぜ加害者の親は被害者を責めてしまうのか?
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これには複数の心理的要因が関係します。自分の子育ての否定を避けたい気持ち、家族の問題を外部に知られたくない気持ち、そして現実から目を逸らしたい気持ちなどが複雑に絡み合っています。しかし、このような態度は問題の解決を遅らせ、被害者をさらに傷つけることになります。
- DV被害者を支援する団体にはどのようなものがある?
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全国の配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所、民間シェルター、各種相談窓口などが支援を行っています。また、「DV相談プラス」では24時間365日、電話やメール、チャットでの相談を受け付けています。地域の女性センターや男女共同参画センターでも、相談や支援を行っています。