はじめに
会議で自分の考えを説明しようとしたとき、「なんとなくそう思うんです」と言ってしまい、上手く伝わらなかった経験はありませんか? あるいは、企画書を書いているとき、「どうやって説明したらいいんだろう…」と悩んだことは?
そんなとき、助けになるのが「ロジカルシンキング(論理的思考)」です。難しく聞こえるかもしれませんが、要は「考えを整理して、相手に分かりやすく伝える」コツのこと。誰でも身につけられる便利なスキルなんです。
ちょっとした工夫を意識するだけで、「伝わる」「説得力がある」「スッキリまとまっている」と言われる資料や説明ができるようになりますよ。
ロジカルシンキングとは?
「なんとなく」が「なるほど!」に変わる考え方
「この企画、なんとなくいけると思うんです」「感覚的にこっちの方がいいかな…」
こんな経験、ありませんか?せっかく良いアイデアを思いついても、「なんとなく」や「感覚的に」という言葉を使ってしまうと、周りの共感を得るのが難しくなってしまいます。
でも、心配はいりません。実はちょっとした工夫で、あなたの考えはもっと説得力のあるものになります。
そのカギとなるのが「なぜ?」という問いかけ。たとえば、「来週中にこの企画書を提出したい」と考えたとき。単に「締切に間に合わせたい」で終わらせるのではなく、「社内での確認に3日、修正に2日必要だから、来週中の提出が望ましい」というように、理由を具体的に示していくんです。
このように「なぜそう考えたのか」を丁寧に説明できるようになると、チームでの打ち合わせがスムーズになり、上司への報告も伝わりやすくなります。なにより、自分の考えに自信が持てるようになりますよ。
ロジカルシンキングの基本となる6つのポイント
仕事で実践するロジカルシンキング。難しそうに聞こえますが、以下の6つのポイントを意識するところから始めてみましょう。
話の筋道を整理する
「なぜその結論に至ったのか」が自然と伝わる話し方を心がけましょう。例えば、新しい企画を提案するとき、「売上アップが期待できる」だけでなく、「これまでの実績からみて○○%の伸びが見込める」というように、根拠を示しながら説明すると効果的です。
ムダを省いてシンプルに考える
たくさんの情報の中から、本当に必要なものを見極めることが大切です。会議の議題を決めるとき、「今回の目的に関係ある項目かどうか」を確認しながら整理していくと、議論がぶれにくくなります。
原因と結果をつなげて考える
「なぜそうなったのか」「その結果どうなるのか」を順序立てて考えていきます。例えば、商品の売上が下がっているとき、「価格が高いから」で終わらせず、「競合他社との価格差が○○円あるため」と、具体的な理由を探っていきます。
大きな問題を小分けにする
複雑な問題も、小さく分けると対処しやすくなります。新規プロジェクトを始めるとき、「準備」「実施」「フォロー」というように段階を分けて考えると、必要な作業が見えやすくなりますよ。
固定観念にとらわれない
「いつもこうだから」「前例がないから」という考えを一度脇に置いて、事実に基づいて判断することが大切です。新しいアイデアも、実績やデータを基に検討してみましょう。
具体的な数字や言葉を使う
「かなり良い結果」ではなく「前月比120%の成長」というように、具体的な表現を使うと説得力が増します。特に報告や提案の場面では、あいまいな表現を避けることを意識してみてください。
ロジカルシンキングで仕事がこう変わる
「論理的に考える」というと難しく感じるかもしれません。でも、少しずつ習慣づけていくことで、仕事の様々な場面で効果を実感できるようになります。
スムーズな問題解決ができるように
「なんとなく上手くいかない」で終わらせず、「なぜ」「どうして」と原因を探っていくことで、本当の問題点が見えてきます。例えば、締切に間に合わないとき、「作業が遅れている」という表面的な理由だけでなく、「手順が複雑すぎる」「確認作業に時間がかかりすぎている」といった具体的な課題が見つかりやすくなります。
提案が通りやすくなる
「これはいい案だと思うんです」という説明だけでは、なかなか相手の心は動きません。でも、「前回の○○が好評だったこと」「市場調査での△△という結果」など、具体的な根拠を示しながら説明すると、アイデアが採用されやすくなります。
チームの雰囲気が良くなる
「なぜそう考えたのか」を丁寧に説明できるようになると、チームの中での誤解が減り、お互いの意見を理解しやすくなります。例えば企画会議でも、「それは難しいと思います」で終わらせるのではなく、「○○という点で課題がありそうです」と具体的に話すことで、建設的な議論が生まれやすくなりますよ。
論理的に考えるための3つのアプローチ
「論理的に考える」といっても、実は方法は1つではありません。状況に応じて使い分けることで、より効果的な問題解決ができるようになります。
パターンを見つけて結論を導く
例えば、売れている商品の特徴を分析するとき。「Aという商品は20代に人気、Bという商品も20代に人気、Cという商品も20代に人気…」という具合に、複数の成功例から「若い世代向けの商品作りが効果的」といった傾向を見出していきます。新商品の企画やマーケティング戦略を立てるときに、特に役立つ考え方です。
基本ルールを個別の場面に当てはめる
「お客様の声は商品改善に活かす」という基本方針があるとき、「今回の苦情にはこう対応しよう」「この要望はこう反映させよう」というように、具体的な行動に落とし込んでいく方法です。社内の規則やガイドラインに沿って判断するときに便利です。
さまざまな意見をまとめて最適解を探る
「新しい提案は良いけれど、リスクが心配…」といった場面で活躍します。賛成意見と反対意見の両方を整理し、「では、こういう方法ではどうでしょう」と、新しい案を生み出していきます。チーム内で意見が分かれたときや、難しい判断を迫られるときに特に効果的です。
実践で使える!整理術のコツ
「論理的に考える」といっても、どこから始めればいいのか迷ってしまいますよね。実は、ちょっとしたコツを覚えるだけで、考えがまとまりやすくなります。
情報を整理するときは「抜け漏れ」と「重複」をチェック
例えば、社内イベントの準備リストを作るとき。「会場」「参加者」「備品」「当日の進行」というように項目を分けることで、必要な作業を見落とさず、かつ効率的に進められます。最初は小規模な企画から試してみると、慣れやすいですよ。
「それって、どういうこと?」を習慣に
「売上が下がっている」という状況に直面したとき、「では、具体的にどれくらい下がっているの?」「なぜ下がったと思う?」と掘り下げていくことで、本当の課題が見えてきます。会議での発言や報告書を作るときも、この問いかけを意識すると内容が充実します。
結論から話を組み立てる
プレゼンや企画書では、最初に「こうしたいです」という結論を示し、その後に「なぜなら〇〇だからです」と理由を説明していく方法が効果的。「先月の売上が15%アップしました。理由は新商品の投入と、SNS施策の成功です」というように、聞き手が理解しやすい順序で説明できます。
複雑な問題は「枝分かれ」させて整理
「なぜ残業が多いのか」を考えるとき、「作業量」「進め方」「スキル」など、要因を分類していきます。さらにそれぞれの枝から「なぜ?」を掘り下げることで、「作業量→急な依頼が多い→計画的な案件管理が必要」といった具体的な解決策が見えてきます。
毎日できる!論理的思考力の育て方
「論理的に考える」力は、日々の小さな習慣から育てていけます。難しく考えすぎず、できることから始めてみましょう。
メモを取りながら考える習慣をつけてみる
例えば、企画書を書くとき。「なぜこの企画が必要なのか」「どんな効果が期待できるのか」といった点を、箇条書きでメモしていきます。思いついた順でかまいません。後から「これとこれは繋がりがありそうだな」と整理していけば、自然と筋道の通った内容になっていきますよ。
「要するに何が言いたいの?」と自問する
会議の準備をしているとき、ついつい資料をたくさん用意してしまいがち。でも、「伝えたいポイントは何か」と自分に問いかけてみると、必要な情報が見えてきます。無駄な資料作りも減って、時間の節約にもなります。
自分の意見に「でも」をつけてみる
「この方法で進めましょう」と考えたとき、「でも、こんな課題があるかも」と、あえて反対の立場で考えてみます。例えば新しいサービスを企画するとき、「確かに面白いけれど、まだ市場は大きくないかも」といった具合に。最初は少し照れくさいかもしれませんが、意外な発見につながることも。
「たぶんこうなるはず」を確認する習慣をつける
「このやり方なら、効率が上がるはず」と思ったとき、実際に小さな範囲で試してみる。「予想通りの結果になったかな?」と振り返ることで、次の判断に活かせる経験が積み重なっていきます。
気をつけたい!論理的に考えすぎるワナ
論理的に考えることは大切ですが、やりすぎてしまうと逆効果になることも。ここでは、よくありがちな落とし手と、その対処法をご紹介します。
「論理的」が目的になっていませんか?
「とにかく論理的に説明しなければ」と思いすぎて、本来の目的を見失ってしまうことがあります。例えば、企画書を作るとき、「きちんと筋道を立てて書かなければ」と考えるあまり、肝心の「お客様に喜んでいただける内容か」という視点が薄れてしまうことも。まずは「何のために」を思い出してみましょう。
いつもの考え方に縛られていませんか?
「前例がないから」「自分の経験では」という枠に、知らず知らずはまってしまうもの。新しい商品企画を考えるとき、「これまでこうだったから」という思い込みが、良いアイデアの芽を摘んでしまうかもしれません。時には「もし○○だったら?」と、普段とは違う角度から考えてみるのも良いですね。
根拠は確かなものですか?
「みんなが言っているから」「なんとなくそう思うから」という理由で判断していませんか?例えば「若い人はこういうのが好き」という思い込みで企画を進めても、実際のニーズとずれていては効果が期待できません。大切な判断をするときは、できるだけ具体的な数字や事実を確認する習慣をつけましょう。
これから始める、論理的思考力アップ
「ロジカルシンキング」という言葉を聞くと、難しく感じるかもしれません。でも、決して特別なスキルではありません。「なぜそう考えたの?」と自分に問いかけたり、メモを取りながら整理したり…。そんな小さな習慣の積み重ねが、確実に仕事の質を高めてくれます。
最初は会議の準備や日報作り、短い報告メールなど、身近なところから始めてみましょう。考えをまとめる時間が少し増えるかもしれませんが、その分、チームでの話し合いがスムーズになったり、企画が通りやすくなったり。きっと、仕事が楽しくなるはずです。
大切なのは、完璧を目指さないこと。今日からできる小さなことから、一緒に始めてみませんか?