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映画レビュー『スオミの話をしよう』 – 三谷幸喜監督5年ぶりの新作

「スオミの話をしよう」は、三谷幸喜監督が5年ぶりに手掛けた新作映画です。資産家で詩人の寒川静の妻・素見が失踪するというミステリーコメディであり、三谷監督特有の舞台的な演出が色濃く反映されています。今回は、作品の魅力や演出、そして気になる点についてレビューしていきます。

目次

舞台的演出が際立つロングカット

三谷作品らしさが光る舞台的な映像

三谷幸喜監督といえば、舞台的な演出が大きな特徴ですが、今回の「スオミの話をしよう」もその要素が全面に出ています。映画全体を通してロングカットが多用されており、役者たちが限られた空間で動き回る様子が、まるで舞台を見ているかのように感じられます。緻密に計算されたセットとキャスティングによって、役者たちの動きが自然にストーリーに溶け込んでいるのが印象的です。

長回しの演技が見どころ

特に長回しの演技は、舞台的演出の真骨頂です。役者たちが同じ空間で繰り広げる一連の動作や対話は、彼らのスキルが存分に発揮されており、観ている側もその演技に引き込まれます。三谷作品のファンにとっては、この演技が醍醐味のひとつと言えるでしょう。

長澤まさみが魅せる多面的なキャラクター

役者としての魅力が凝縮

本作で最も注目すべきは、長澤まさみさんの演技です。彼女は失踪した素見という役を演じ、5人の夫それぞれに異なる姿を見せます。彼らの理想像を反映しながら、変幻自在にキャラクターを演じ分ける姿は圧巻です。特にその美貌と演技力は際立っており、さまざまな側面を持つ彼女を観客が堪能できる場面が多いのも魅力です。

妻という役割の多様な表現

素見が複数の夫を持ち、それぞれの夫に異なる姿を見せるという設定は、妻という存在を多面的に描いています。素見は夫たちの理想を体現しようとし、そのために自分自身を変え続ける。そんな彼女の葛藤や苦悩が物語の中心にあり、長澤まさみさんが演じることで、さらに深みが増しています。

ミステリーとコメディのバランス

ミステリー要素はやや弱い

物語の中心となるのは、素見の失踪に絡んだミステリーですが、ストーリー展開としては驚きが少なく、ミステリーの魅力としてはやや物足りなさを感じました。失踪事件の謎解きが進むにつれて、サスペンスの緊張感が薄まり、期待していた展開と少し異なる印象を受けるかもしれません。

コメディ要素もやや低調

三谷幸喜監督といえばコメディですが、今回はその要素も少し弱く感じました。特に後半のミュージカルシーンや茶番劇が続く場面では、笑いよりもくどさが目立ってしまい、観客を引き込む力がやや不足していたように思います。テンポ感が弱く、冗長に感じる部分があったのは残念な点です。

総評

「スオミの話をしよう」は、三谷幸喜監督らしい舞台的演出と、長澤まさみさんをはじめとする役者陣の演技が光る作品です。しかし、ミステリー要素やコメディの強さは過去作に比べてやや弱く、全体的にもう少し工夫が欲しかったという印象を受けました。それでも、長回しの演技や長澤まさみさんの多面的なキャラクター表現は一見の価値があります。

評価:★★★☆☆

三谷幸喜作品のファンには楽しめる部分が多いものの、期待するほどの盛り上がりや驚きを感じにくい点が残念なところです。それでも、役者たちの力強い演技が印象に残る映画でした。三谷作品特有の舞台的な演出に馴染みのある方は、ぜひ観ていただきたい作品です。

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