映画『Cloud クラウド』感想レビュー:不自然な展開とリアリティのないシュールさを楽しむ

こんにちは!今回は、黒沢清監督が手がけた映画『Cloud クラウド』についてレビューをお届けします。この映画は、主演の菅田将暉さんが演じる転売屋・吉井が奇妙でシュールな世界に巻き込まれる物語です。

黒沢監督といえば『キュア』や『クリーピー 偽りの隣人』などで知られる日本映画界の巨匠。その独特な視点とシュールな演出が特徴的な監督ですが、今回もその個性が存分に発揮されています。

主演の菅田将暉さんに加えて、古川琴音さん、奥平大兼さん、窪田正孝さん、そして松重豊さんなど実力派のキャストが顔を揃えています。ただ、この作品は非常に独特で、見ている間に「一体これは何なんだろう?」と感じる場面が多々ありました。

不自然な展開やリアリティの欠如に、思わず笑ってしまうかもしれませんが、そこには現代のネット社会に対する強烈なメッセージが込められています。今回は、そんなシュールで奇妙な『Cloud クラウド』の魅力と、不自然さの裏に隠された意味について一緒に考えていきましょう。ネタバレを含むので、まだ映画をご覧になっていない方はご注意くださいね!

目次

奇妙な世界観と主人公の物語

転売屋・吉井というキャラクター

映画の主人公、吉井(菅田将暉)は転売屋「ラーテル」として生活を送る男です。吉井は安価な商品を高く転売することで日々の糧を得ており、その利己的な行動が物語の中心にあります。この役どころを演じる菅田さんは、非常にリアルな「嫌なやつ」を見事に表現しており、観客に嫌悪感を抱かせるほどの巧みな演技を見せてくれます。

また、吉井の恋人・秋子を演じるのは古川琴音さん。彼女は吉井との微妙な関係を絶妙に演じています。二人の新生活には何か不穏な空気が漂い、どこかずれている感覚を観客に与えます。

恋人や仲間たちの役割

吉井の周りには、多くの不思議なキャラクターたちが存在します。地元の若者・佐野(奥平大兼)は吉井の転売業を手伝うバイトとして登場しますが、物語が進むにつれて彼の謎めいた背景が浮かび上がります。さらに、吉井の先輩である村岡(窪田正孝)や滝本(荒川良々)など、登場人物たちの行動や動機には常に何かしらの裏があり、それが観客に不安感を抱かせる演出となっています。

ネット社会の恐怖を映し出す物語

「ラーテル」から広がる憎悪の波

映画の後半、吉井はネット上で炎上し、見知らぬ人々からターゲットにされます。この展開は、ネット社会における匿名性の恐怖や、群衆心理の危険性を強く描写しています。吉井を襲う集団は個人的な恨みを持っているわけではなく、ただ「転売屋を懲らしめる」という目的だけで攻撃に参加しています。

この描写は、現代のSNS上での「炎上」や集団攻撃を象徴しており、誰もがその標的になり得るという怖さを感じさせます。また、恋人の秋子(古川琴音さん)が吉井を裏切るシーンは非常に象徴的です。秋子は吉井を助けるふりをしながら、実は彼の財産を狙っていたのです。この裏切りのシーンは、古川さんの演技により強いインパクトを持たせています。

クラウドというタイトルが示す意味

タイトルの「クラウド」には、雲のように形のない存在という意味が込められています。吉井が引き起こす出来事がネットを介してあっという間に広がり、実体のないものが現実に影響を与えていく様子は、まさに「クラウド」というタイトルを象徴しています。この「クラウド」は、現代社会での情報の拡散やそれに伴う危険を巧みに表現しているとも言えます。

不自然さとリアリティの欠如について

転売シーンの現実味の欠如

吉井が安価で手に入れた医療機器を高額で転売し、簡単に莫大な利益を得るというシーンは、あまりに現実離れしています。「ソールドアウト」の文字が次々と画面に表示される様子は、思わず「そんな簡単に売れるわけないでしょ」と突っ込みたくなる場面です。

この非現実的な描写は、物語全体のシュールさを強調し、現実感を薄れさせています。

銃撃戦とシュールな結末

映画のラスト、吉井が襲撃者たちと銃撃戦を繰り広げるシーンでは、リアリティが著しく欠けています。銃声の大きさや効果音は非常にリアルですが、それに対して登場人物たちの行動や状況はあまりにシュールで、不自然さを感じざるを得ません。このシーンはまるでFPSゲームのように描かれており、映画の現実味をさらに薄れさせています。

結論

『Cloud クラウド』は、シュールな物語展開や非現実的な設定の中に、現代のネット社会に対する皮肉や批判を織り交ぜた作品です。黒沢清監督の独特な世界観は、観る者に「これは一体何なのか」と考えさせる余地を与えます。主演の菅田将暉さんや他の実力派キャストが、それぞれに強烈な個性を発揮し、物語の不条理さを際立たせています。

シュールさの中に現代社会の危うさを感じさせる『Cloud クラウド』。ぜひ、この映画を見て、自分自身の感じたことや考えたことを共有してみてください。もしかしたらあなたも、「これは一体何だったのか」と思いながらも、どこか心に残る映画体験になるかもしれません。

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