他人を叩いて喜ぶ「正義中毒」の心理とは?脳科学から読み解くその正体

インターネットの普及により、私たちは他人の行動に容易に反応し、自分の意見を発信することができるようになりました。特に、SNS上で他人のミスや不正に対して攻撃的なコメントが相次ぐことが多くなり、「正義の名のもとに他人を叩く」現象が顕著に見られます。こうした行動を脳科学者の中野信子さんは「正義中毒」と呼び、脳の快楽メカニズムが深く関与していると指摘しています。本記事では、正義中毒の背景にある脳の働きや、その行動が持つ危険性について考察します。

目次

1. 正義中毒とは何か?

ルール違反を探し出し、叩く快感

「正義中毒」とは、他人のルール違反や行動を見つけ出して攻撃することで快感を得る状態を指します。例えば、ネット上で不倫スキャンダルが取り沙汰された際に、全く関係のない人々がその人物を厳しく批判するケースがあります。こうした行為は、脳が「他人を叩くこと」によって快感を得るメカニズムに基づいています。まさに、自分には直接関係のない問題でも、他人を糾弾することで「自分は正しいことをしている」という満足感を得るのです。

こうした行動は、単に他人の間違いを指摘するだけでなく、相手を「叩く」こと自体に楽しさを見出してしまうことに起因します。そしてこの快楽が癖になり、他人を攻撃することを止められなくなるという中毒的な状態に陥るのです。

SNSでの「叩き行動」の広がり

特にSNSでは、他人を攻撃する行動が「正義」として広がりやすい傾向があります。不倫報道や不正行為を見つけると、関係のない人々がこぞって攻撃的なコメントを投稿することが一般的になりつつあります。こうした状況で「正義中毒」に陥っているかもしれない自分に気づくことは非常に重要です。SNSは情報の拡散力が大きく、些細なことであっても一気に多くの人に影響を与えるため、無意識のうちに誰かを傷つけてしまう可能性があるのです。

2. 正義中毒に陥る心理と脳の働き

他に楽しみがないことが原因?

脳科学者の中野信子さんは、正義中毒に陥る人々には「他に楽しみがない」ことが一因であると述べています。他人を攻撃することでしか楽しみを得られない状態にある場合、その行動は中毒的に繰り返されやすくなります。エンターテイメントや趣味など、他の楽しみがない人ほど、他人を叩く行為に強く依存してしまうのです。

また、正義中毒に陥る人は、他人の気持ちに寄り添うことが得意であることが多いです。そのため、他人が苦しんでいる状況を見ると「自分が正義のために動かなければ」という感情に駆られ、その正義感が行き過ぎてしまうことがあります。こうした人々は「誰かのためになる行動」が快感として脳に刻まれ、それが繰り返されることで中毒状態に陥るのです。

社会性の高さと全体主義への危険性

正義中毒に陥りやすい人々は、社会性が高く、他人を自分よりも優先することができる人々です。しかし、自分が常に我慢して社会や他人のために尽くしていると、自己中心的な行動をとる他人に対して強い反感を抱くことがあります。「私は皆のために我慢しているのに、なぜあの人は自分のためだけに行動するのか」という思いが、他人を叩く衝動につながるのです。

これは全体主義やファシズムへと向かう社会の中で、特に強く表れる傾向です。歴史的に見ても、災害や危機の際にはこうした正義感が暴走しやすく、社会全体が抑圧的な方向へと進んでしまう危険性があります。そのため、個々人が「自分も少しは自分のことを大切にしよう」という意識を持つことが重要です。

3. 正義中毒から抜け出すために

我慢を押し付けないこと

正義中毒の根底には、自分が我慢していることへの強い意識があります。自分が我慢しているから他人も我慢すべきだという考え方は、他人への攻撃に繋がりやすいのです。しかし、自分が我慢していることを他人に強制することが正しいとは限りません。むしろ、そうした行動が相手に対する攻撃となり、社会全体に悪影響を及ぼすことがあります。

例えば、「自分は毎朝早くからドラッグストアに並んでいるのに、他の人は何もせずに手に入れようとしている」といった思いから他人を責めるのは、無意味な攻撃です。そうした怒りを他人にぶつける前に、「自分の我慢を他人に押し付けていないか?」と振り返ることが必要です。

他人を叩く前に立ち止まる

正義中毒から抜け出すためには、他人を叩く前に一度立ち止まることが重要です。本当にその行動が誰かのためになっているのかを考え、「無駄な攻撃ではないか?」と自問することが求められます。叩くことが誰の利益にもならないのであれば、それは無駄な行動です。自己の正義感を満足させるためだけに他人を攻撃することは、社会を良くするどころか逆効果となる可能性があります。

また、他人の行動をただ批判するのではなく、自分が楽しみを見つけたり、他人に対してポジティブな影響を与えるような行動を心がけることも重要です。趣味や新しい経験を通じて自分自身を充実させることで、他人を攻撃する必要性がなくなるかもしれません。

まとめ

「正義中毒」とは、他人を攻撃することに快感を感じ、それが習慣化してしまう危険な状態です。特にSNSが発達した現代では、誰もが簡単に他人を批判し、攻撃することができる環境が整っています。しかし、他人を叩くことで得られる一時的な快感は、社会にとっても、個人にとっても長期的には良い影響を与えるものではありません。

正義中毒から抜け出すためには、自分が我慢していることを他人に押し付けず、他人を攻撃する前に冷静に立ち止まることが重要です。そして、自分自身の生活に充実感を見出し、他人に対して優しさを持つことが、真の意味での「正義」につながるのではないでしょうか。私たちは皆、それぞれの「正義」を持っていますが、その「正義」が他人にどのような影響を与えるかを常に考えながら行動していきたいものです。

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